Letter 免疫:母乳を介した抗原の移行は免疫寛容を惹起してアレルギー喘息を予防する 2008年2月1日 Nature Medicine 14, 2 doi: 10.1038/nm1718 アレルギー喘息は、アレルゲンへの曝露に応じて起こる気道閉塞を特徴とする慢性疾患である。この疾患は、環境中に浮遊する抗原に対する2型ヘルパーT細胞の不適切な応答によって発症し、3億人が罹患している。罹患率はこの数十年間に大きく上昇したが、その最大の理由は環境要因の変化であると考えられる。乳児期の環境中の抗原への曝露は、喘息の発症にきわめて重要である。母乳育児とアレルギー疾患との関連に関する疫学研究の結果は一致したものではない。本論文では、授乳期のマウスの空気中アレルゲンへの曝露が、仔マウスの喘息発症に影響を及ぼすかどうかを検討した。空気中の抗原は母乳を介して母体から新生仔に効率よく移行し、免疫寛容の誘導には免疫グロブリンの移行を必要としないことがわかった。母乳育児によって誘導される免疫寛容は、授乳時のトランスフォーミング増殖因子(TGF)-βの存在に左右され、調節性CD4+Tリンパ球を介し、T細胞のTGF-βシグナル伝達に依存する。つまり、母乳を介して新生仔へ抗原が移行することにより経口免疫寛容誘導が惹起され、これがアレルギー性気道疾患に対する抗原特異的な保護作用につながる。本研究は、アレルギー疾患の発症を予防するための新たな戦略デザインへの道を開くと考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る