Article

神経提障害:神経堤障害であるトリーチャー・コリンズ症候群のp53機能阻害による予防

Nature Medicine 14, 2 doi: 10.1038/nm1725

トリーチャー・コリンズ症候群(TCS)は頭蓋顔面の先天的な発生異常で、核小体のリン酸化タンパク質TreacleをコードするTCOF1の変異によって起こる。Tcof1のハプロ不全は成熟リボソームの生合成を障害し、その結果p53の安定化とサイクリンG1が介在する細胞周期停止が生じて、これがTCSの特徴である神経上皮細胞の特異的アポトーシスと神経堤細胞の低形成の原因となる。今回我々は、p53の阻害がサイクリンG1誘導性アポトーシスによる神経堤細胞の除去を防ぎ、TCOF1の変異にともなってみられる頭蓋顔面異常を救済し、寿命を延長することを示す。しかし、これらの改善はリボソーム生合成に対する影響とは無関係に起こり、これは神経上皮細胞のp53依存性アポトーシスがTCSの病態発現をもたらす主要な機構であることを示唆している。また、我々の研究結果は、神経上皮細胞と神経堤細胞は胚発生の間の細胞ストレスに対して特に感受性が高いことを示唆しており、p53機能の抑制はTCSの頭蓋顔面先天異常、またおそらくは他の神経堤障害症状の臨床的予防も可能と考えられる有望な手段となることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度