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免疫:中枢神経系自己免疫に対するTH1細胞とTH17細胞による異なる制御

Nature Medicine 14, 3 doi: 10.1038/nm1715

多発性硬化症は中枢神経系(CNS)における炎症性の脱髄疾患であり、多様な臨床的症状を特徴とする。CNSの損傷の部位はさまざまであり、損傷部位は臨床的転帰における極めて重要な決定因子となる。多発性硬化症はミエリン特異的T細胞を介して発症すると考えられているが、T細胞による炎症開始部位を決定する機序は明らかでない。損傷分布の差異がHLA複合体と関連づけられてきたことは、T細胞の特異性が炎症部位に影響することを示唆している。我々は、異なるミエリンエピトープに特異的なT細胞が、TCRとペプチド-MHC複合体との相互作用の機能的アビディティーに依存して、1型ヘルパーT(TH1)細胞と17型ヘルパーT(TH17)細胞との存在比の違いによって特徴づけられる集団を形成することを示す。注目すべきことに、浸潤性T細胞のTH17:TH1比はCNSでの炎症部位を決定する。ミエリン特異的なT細胞は、TH17:TH1比に関係なく、CNS全体にわたって髄膜に浸潤する。しかし、脳実質でのT細胞浸潤と炎症は、TH17細胞数がTH1細胞に比べて圧倒的に多い場合にのみ生じ、脳内におけるインターロイキン17の不均衡な発現増加を引き起こす。これに対して、TH17:TH1比が広範囲にわたるT細胞集団は、脊髄実質の炎症を誘発する。今回の知見は、脳と脊髄では炎症の制御に極めて重大な相異があることを明らかにしている。

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