Letter 筋ジストロフィー症:ミトコンドリア依存性ネクローシスの遺伝学的および薬理学的な阻害は筋ジストロフィー症を軽減する 2008年4月4日 Nature Medicine 14, 4 doi: 10.1038/nm1736 筋ジストロフィー症は筋肉の萎縮を来たし、多くの場合に早期死亡に至るようなさまざまな遺伝的異常からなる。筋ジストロフィー症を引き起こす変異の多くは、細胞内の筋原繊維タンパク質を細胞外の基底膜につなぐ支持ネットワークを損ない、これが筋鞘の透過性を高め漏出を起こす。本論文では、シクロフィリンDをコードする遺伝子(Ppif)の欠失によって、欠陥のある筋鞘に関連して起こるカルシウム過負荷誘発性のミトコンドリア膨潤がほとんど起こらなくなり、このため筋ジストロフィー症の2つのモデルで筋繊維のネクローシスが減少したことを報告する。δ-サルコグリカン欠損マウス(Scgd-/-マウス)では、Ppifが存在しないと骨格筋と心臓でジストロフィー症の症状が著しく軽減した。また、ラミニン2のα-2鎖をコードするLama2の欠失と関連する早期死亡が、ジストロフィー症の他の指標とともに救済された。シクロフィリン阻害剤Debio-025の投与も同様に、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルであるmdxマウス、およびScgd-/-マウスでのミトコンドリア膨潤およびネクローシス性疾患の症状を軽減した。したがって、ミトコンドリアに依存するネクローシスは、筋ジストロフィー症の重要な発症機構であり、シクロフィリンDの阻害はジストロフィー症疾患の新たな薬理学的治療戦略となる可能性が示唆される。 Full text PDF 目次へ戻る