Article 免疫:CCL3L1-CCR5の遺伝子型はHIV-1感染者の抗レトロウイルス治療中における免疫能回復の持続性に影響を及ぼす 2008年4月4日 Nature Medicine 14, 4 doi: 10.1038/nm1741 強力な抗レトロウイルス剤の多剤併用療法(HAART)を受けているHIV感染者のCD4+T細胞数の回復がきわめて多様であることの根拠についてはよくわかっていない。本論文では、免疫能の再構築に影響を与えるのは、主要組織適合遺伝子複合体HLAの対立遺伝子の違いではなく、CCL3L1の遺伝子量とCCR5の遺伝子型の違いであり、特にCD4+T細胞数が350/mm3未満の時点でHAARTを開始した場合にその影響が著しいことを示す。CD4+T細胞の回復を起こしやすい傾向がみられるCCL3L1-CCR5の遺伝子型は、HIV感染症に対してHAARTが導入される以前(pre-HAART era)にみられたCD4+T細胞数の減少が遅延する遺伝子型と類似しており、このことは共通するCCL3L1-CCR5遺伝子経路が罹病初期から疾患進行と回復の過程のバランスを制御していることを示唆している。したがってCCL3L1-CCR5の遺伝子型の違いが、HAARTによる治療を受けている場合でもHIVの病原性に影響を及ぼし、そのためこの違いによって、HAARTによるウイルス抑制を行っているのにもかかわらず、より早期の治療開始が免疫不全を抑える可能性の高い患者を前もって同定できる可能性がある。さらに、HAARTによる治療中のCD4+T細胞の再構築は、CCR5の遺伝子型に比べ、CCL3L1の遺伝子量の方の影響を受けやすいので、CCL3L1類似体は免疫の再構築を助ける上で有用であるかもしれない。 Full text PDF 目次へ戻る