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免疫:サル免疫不全ウイルスが引き起こす粘膜でのインターロイキン17の欠如は腸管からのサルモネラ菌播種を促進する

Nature Medicine 14, 4 doi: 10.1038/nm1743

ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)は免疫が正常の個体では限局的な腸管感染を起こすが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染個体では生命にかかわる菌血症に進行する。本論文では、サル免疫不全ウイルス(SIV)感染によって、アカゲザルでは回腸粘膜における17型ヘルパーT(TH17)細胞が激減し、その結果、粘膜の障壁機能が損なわれてネズミチフス菌が播種されることを示す。SIVに感染していないアカゲザルでは、回腸結紮ループ内でネズミチフス菌によって誘導される遺伝子発現プロファイルはインターロイキン17(IL-17)やIL-22の発現などの17型TH応答が主体であった。SIVに感染したアカゲザルではTH17細胞が大幅に減少しており、そのためにネズミチフス菌感染に対するTH17応答が低下してこの菌の播種が増強された。IL-17受容体欠損マウスでは腸管からのネズミチフス菌の全身への播種が増大し、これはIL-17の欠如が粘膜障壁機能を損なう原因であることを示唆している。したがって、SIV感染は消化管からの微生物の全身への播種を防ぐ粘膜免疫応答の1つであるIL-17系に障害を引き起こすと結論される。

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