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肺疾患:セラミドの蓄積は嚢胞性繊維症で炎症、細胞死および易感染性をもたらす

Nature Medicine 14, 4 doi: 10.1038/nm1748

肺への微生物感染は遺伝性代謝疾患である嚢胞性繊維症の病状と死亡の主要原因であるが、嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)に起こった遺伝子変異が肺感染をもたらす分子機構はいまだに不明である。今回我々は、未感染のCftr欠損マウスの気道には、Cftr欠損細胞の細胞内小胞のアルカリ化によりセラミドが年齢依存的に蓄積することを示す。このpH変化によって、酸性スフィンゴミエリナーゼ(Asm)によるスフィンゴミエリンのセラミドへの切断と酸性セラミダーゼによるセラミド分解のバランスが乱れ、その結果セラミドが高濃度となる。セラミドの蓄積はCftr欠損マウスに年齢依存的な構成性の肺炎症、呼吸器上皮細胞の細胞死、気管支でのDNAの沈着と重症の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症に対する易感染性をもたらす。Cftr-/-Smpd1+/-マウスにおけるAsmの不完全遺伝子欠損、あるいはCftr欠損マウスに対するAsm阻害薬アミトリプチリンの投与は、肺のセラミド蓄積を正常化し、易感染性を含むすべての病態所見を予防する。以上の結果は、Asmの阻害が嚢胞性繊維症の新たな治療戦略となる可能性を示唆している。

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