Letter 子癇前症:アンギオテンシン受容体アゴニスト活性を示す自己抗体は妊娠マウスで子癇前症を引き起こす 2008年8月1日 Nature Medicine 14, 8 doi: 10.1038/nm.1856 子癇前症は妊娠の約5%で起こり、米国および全世界で母体と新生児の死亡および罹病の最大原因でありつづけている。この母体疾患の臨床的特徴には、高血圧、タンパク尿症、血管内皮障害と胎盤障害が含まれる。妊娠が進行してからの臨床症状には、脳出血、腎不全およびHELLP(hemolysis, elevated liver enzyme and low platelets:溶血、肝酵素の上昇、血小板減少)症候群などがある。病因解明が十分でないため、子癇前症の有効な治療法は今のところない。最近の多くの研究で、子癇前症の女性がAT1-AAと呼ばれる自己抗体をもつことが示されており、この自己抗体はアンギオテンシンII受容体1a型(AT1受容体)に結合し、活性化させる。今回我々は、子癇前症の女性から採取した全IgGあるいはアフィニティー精製したAT1-AAを妊娠マウスに投与すると、高血圧、タンパク尿症、糸球体内皮症(子癇前症にともなう標準的な腎臓病変)、胎盤異常、胎児サイズの縮小などの子癇前症の主要な特徴があらわれることを示す。これらの特徴はAT1受容体アンタゴニストであるロサルタンの同時投与、あるいは抗体を中和するエピトープペプチド(7個のアミノ酸からなる)の投与により防止された。したがって、本研究は、子癇前症は妊娠誘発性の自己免疫疾患であり、この疾患の主要な特徴が自己抗体によって誘導されるアンギオテンシン受容体活性化によって引き起こされる可能性を示している。我々の仮説は明らかに、子癇前症のスクリーニング、診断および治療に密接なかかわりがある。 Full text PDF 目次へ戻る