Technical Report がん:pH感受性蛍光プローブの活用による生きているがん細胞の選択的分子イメージング 2009年1月1日 Nature Medicine 15, 1 doi: 10.1038/nm.1854 がんの診断における長期目標の1つに、特異性と感受性に優れた腫瘍画像化技術の開発がある。この目標を達成するには、標的以外の組織からのバックグラウンドシグナルを最小限にとどめることが不可欠である。今回我々は、新規に設計した「標的結合後にのみ信号を発する」蛍光イメージングプローブを用いて、がんをin vivoで高選択的に可視化することに成功した。この蛍光プローブは細胞内に取り込まれた後、リソソーム内の低pH環境で構造が変化し発光する。作製にあたっては、ホウ素−ジピロメテン蛍光団をベースとして新規の酸性pH感受性プローブを合成し、次にこれを、がんを標的とするモノクローナル抗体に結合させた。一検証例として、マウスでのヒト上皮細胞増殖因子受容体2型陽性がん細胞をex vivoおよびin vivoで画像化することに成功した。このプローブは腫瘍に高度な選択性を示し、腫瘍以外からの信号は最小限に抑えられた。また、リソソーム内の酸性pHはエネルギーを消費するプロトンポンプによって維持されるため、生きているがん細胞のみがうまく可視化された。この設計コンセプトは、細胞内へ取り込まれる、がん特異的な細胞表面標的分子に広く適用可能である。 Full text PDF 目次へ戻る