Technical Report

がん:レンチウイルスベクターを用いたグリオーマ新規マウスモデルの開発

Nature Medicine 15, 1 doi: 10.1038/nm.1863

本論文では、免疫機構が正常な野生型成体マウスの脳に、がん遺伝子を発現するCre-loxP制御型レンチウイルスベクターを注入することで、多形性膠芽腫を発生させる新手法を開発したことを報告する。腫瘍抑制因子Tp53をコードする遺伝子をヘテロ接合でもつマウスの海馬、脳室下領域もしくは大脳皮質において、60個未満のグリア細胞繊維性酸性タンパク質陽性細胞で、がん遺伝子産物であるHarvey-RasおよびAKTの活性化型を細胞種特異的あるいは領域特異的に発現させ、結果を検証した。マウスの海馬または脳室下領域のいずれかに導入した場合には、多形性膠芽腫が発生した。しかし、大脳皮質に導入した場合には腫瘍は稀にしか発生しなかった。これらの脳腫瘍細胞を免疫不全マウスの脳に移植すると、多形性膠芽腫様の腫瘍が形成された。この腫瘍はCD133+細胞を含み、腫瘍球を形成し、ニューロンや星状膠細胞への分化が可能であった。Cre-loxP制御型レンチウイルスベクターの使用は、野生型の成体マウスを用いて領域特異的および細胞種特異的に、多形性膠芽腫のマウスモデルを作出するための新規の手法になると考えられる。

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