Article 腫瘍:γ-セクレターゼ阻害剤はT細胞性急性リンパ芽球性白血病のグルココルチコイド耐性を無効にする 2009年1月1日 Nature Medicine 15, 1 doi: 10.1038/nm.1900 γ-セクレターゼ阻害剤(GSI)はT細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)でがんタンパク質であるNotch homolog-1(NOTCH1)の活性化を阻害する。しかし、これらの分子標的薬は白血病細胞に対する細胞毒性が限られていることや重度の消化管障害を起こすことから、その臨床応用が制限されてきた。本論文では、GSIとグルココルチコイドの併用療法は、GSIの抗白血病効果を改善し、in vivoでの腸管毒性を軽減できることを示す。グルココルチコイド耐性のT-ALLでNOTCH1シグナル伝達を阻害すると、グルココルチコイド受容体の発現上昇を起こす自己調節機構が回復して、BCL-2−like apoptosis initiator-11をコードする遺伝子(BCL2L11)の誘導を介してアポトーシスによる細胞死が起こった。GSI投与は、細胞周期の負の制御因子で杯細胞の分化に必要とされる転写因子Krüppel-like factor-4をコードする遺伝子(Klf4)の発現上昇により、腸管杯細胞の細胞周期停止と細胞数増加を引き起こした。これに対して、マウスへのグルココルチコイド投与はサイクリンD2遺伝子(Ccnd2)の転写を上昇させ、GSIによるNOTCHシグナル伝達の阻害で一般的にみられる腸杯細胞の化生の発生を防いだ。これらの結果は、グルココルチコイドとGSIの併用がグルココルチコイド耐性T-ALLの治療に果たす役割を裏付けている。 Full text PDF 目次へ戻る