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てんかん:常染色体優性遺伝性外側側頭葉てんかんにおける興奮性シナプスの成熟阻止

Nature Medicine 15, 10 doi: 10.1038/nm.2019

中枢神経系グルタミン酸作動性シナプスのサブセットは、出生後の成長の間に協調的に刈り込みを受け成熟するが、その機序はわかっていない。本論文では、LGI1(leucine-rich,glioma-inactivated protein-1)をコードし、常染色体優性遺伝性外側側頭葉てんかん(ADLTE)患者で変異が認められるヒトてんかん遺伝子LGI1が、海馬におけるこの過程を仲介することを報告する。我々は、ADLTEで見いだされる短縮型変異型LGI1(835delC)を発現するか、あるいは野生型LGI1を過剰発現するトランスジェニック・マウスを作製した。出生後の前シナプスおよび後シナプス機能の正常な成熟は、835delC変異型LGI1によって阻害されるが、これとは逆に、野生型LGI1の過剰では促進が見られた。これと一致して、変異型LGI1は樹状突起の刈り込みを阻害して突起棘密度を増大し、興奮性シナプス伝達を著しく増加させた。抑制性の伝達には、これとは対照的に影響が認められなかった。さらに、変異型LGI1はin vitroではてんかん型放電を、in vivoではγ-アミノ酪酸A(GABAA)受容体の一部の遮断を伴うキンドリング誘導てんかん発生を促進した。したがって、LGI1は、変異が起こると出生後のグルタミン酸作動性神経回路の発達に障害を来たすことにより、てんかんを促進するヒト遺伝子である。

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