Article 脳疾患:カルパインの阻害は滑脳症モデルマウスでのLIS1の発現を促進して、in vivoの表現型を部分的に正常化させる 2009年10月1日 Nature Medicine 15, 10 doi: 10.1038/nm.2023 滑脳症は神経細胞遊走の障害によって起こる重篤な神経疾患である。LIS1(公式略称はPAFAH1B1、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、アイソフォーム1b、サブユニット1をコードする)は、滑脳症患者にみられる変異遺伝子として同定されており、細胞質ダイニンの機能および局在化を調節することが明らかにされている。今回我々は、Lis1+/−マウス胚由来の繊維芽細胞で、カルパインの阻害またはノックダウンがLIS1のタンパク質分解の阻害によりLIS1の量を増加させ、細胞質ダイニン、ミトコンドリアおよびβ-COP陽性小胞の異常分布を正常化させることを示す。また、カルパイン阻害剤がLis1+/−マウスから単離した小脳顆粒状ニューロンの神経細胞移動を改善することも示す。カルパイン阻害剤ALLNをLis1+/−の妊娠マウス母体に腹腔内投与すると、Lis1+/−仔マウスで神経細胞のアポトーシスによる細胞死および神経細胞遊走障害が回復した。また、Lis1+/−マウスで短鎖ヘアピン型RNAを用いてカルパインをin uteroノックダウンすると、大脳皮質層形成の障害が回復した。したがって、カルパインの阻害は滑脳症に対する治療法として有望だと考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る