本論文では、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)による所属リンパ節(DLN)の感染が、DLNの正常な構造と機能に不可欠の恒常性ケモカインCCL21とCXCL13の特異的な発現低下をもたらすことを報告する。この抑制機序は、ネズミチフス菌のリボ多糖(sLPS)に依存することがわかった。CCL21の発現低下には、DLN内でのsLPSとCCL21産生細胞との相互作用が関与しており、これらはToll様受容体4(TLR4)を介した、通常とは異なる宿主シグナル伝達応答を誘導する。この応答ではSocs3(suppressor of cytokine signaling-3)の発現が上昇し、これによってSmad3(mothers against decapentaplegic homolog-3)によって誘導されるCCL21産生が負に制御される。リンパ節構造と細胞輸送の崩壊は、ネズミチフス菌の毒性を強める。これは主にリンパ組織を標的とする病原体が用いる免疫抑制機序の1つを示していると考えられる。