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ウイルス:ヒストンデメチラーゼLSD1の阻害はα-ヘルペスウイルスの溶解性複製と潜伏状態からの再活性化を阻止する

Nature Medicine 15, 11 doi: 10.1038/nm.2051

ヒストン尾部の可逆的メチル化は、転写複合体により認識される正のシグナル、あるいは抑制につながる負のシグナルとして作用する。宿主細胞の転写装置に依存する侵入ウイルス病原体もまた、クロマチンの集合状態と修飾調節の影響を受ける。今回我々は、α-ヘルペスウイルスである単純ヘルペスウイルスおよび水痘帯状疱疹ウイルスによる感染が、抑制性のヒストンH3 Lys9メチル化を受けたクロマチンの急激な蓄積を引き起こすことを示す。この2種のウイルスは共に、前初期(IE)遺伝子の発現を可能にするために、細胞の転写コアクチベーターである宿主細胞因子1(HCF-1)を使って、リシン特異的デメチラーゼ1(LSD1)をウイルスの前初期プロモーターに動員する。LSD1の欠失、あるいはモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)によるその活性の阻害により、抑制性クロマチンの蓄積と、ウイルス遺伝子発現の阻害が起こる。HCF-1はSet1およびMLL1ヒストンH3 Lys4メチルトランスフェラーゼ複合体の構成要素なので、活性化につながるH3 Lys4トリメチル化マークの付加によって抑制性H3 Lys9メチル化修飾を調節している。意外にも、MAOIは知覚ニューロンで潜伏状態にあるHSVの再活性化も阻害し、このことはHCF-1複合体が再活性化機構の重要な要素であることを示している。以上の結果は、ヒストン修飾酵素の薬理学的制御が、ヘルペスウイルス感染の管理戦略となることを裏付けている。

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