Letter 筋ジストロフィー:ジストロフィーの筋肉ではハイパーニトロシル化されたリアノジン受容体カルシウム放出チャネルが漏出性となる 2009年3月1日 Nature Medicine 15, 3 doi: 10.1038/nm.1916 デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンの欠損によって起こる進行性の筋力低下と早期死亡を特徴とする。ジストロフィンの欠損は、巨大なジストロフィン糖タンパク質複合体の崩壊をもたらし、病的なカルシウム(Ca2+)依存性シグナル伝達が起こって筋細胞を傷害する。我々は、筋ジストロフィーmdxマウスモデルでは筋小胞体のCa2+放出チャネルであるリアノジン受容体(RyR1)の構造および機能に異常があり、これがジストロフィーの筋肉でCa2+恒常性に変化を引き起こす一因であることを突き止めた。mdx骨格筋から単離したRyR1は、筋肉のジストロフィー様変化の進行と一致して、年齢依存的にS-ニトロシル化が増加していた。RyR1のS-ニトロシル化はチャネル複合体からFKBP12(別名calstabin-1[calcium channel stabilizing binding protein-1])を失わせ、結果としてチャネルが「漏出性」となった。S107は、RyR1チャネルに結合してニトロシル化チャネルに対するcalstabin-1の結合親和性を増強する化合物である。S107によってmdxマウスでRyR1からのcalstabin-1喪失を防止すると、筋小胞体のCa2+漏出が阻害され、筋肉損傷の生化学的、組織学的証拠が減って、筋肉機能が改善し、運動能力が向上した。これらの知見から、チャネルのS-ニトロシル化とcalstabin-1の喪失によって起こる、RyR1を介した筋小胞体からのCa2+漏出が筋ジストロフィーの筋力低下の一因であり、RyR-1を介する筋小胞体からのCa2+漏出の防止は新たな治療戦略となると考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る