Letter 免疫:エフェクター記憶T細胞応答はサル免疫不全ウイルスのアカゲザル粘膜への攻撃接種に対する防御にかかわっている 2009年3月1日 Nature Medicine 15, 3 doi: 10.1038/nm.1935 HIVやサル免疫不全ウイルス(SIV)の初感染では重度の全身性のウイルス複製が迅速に起こり、またこれらのウイルスが免疫回避能をもつことは、エフェクターT細胞の増殖や分化の刺激を初期のウイルス複製に依存するワクチンにとって根本的な問題となる。分化したエフェクター記憶T細胞(TEM細胞)がウイルス侵入部位に維持されるように設計されたワクチンは、ウイルス複製を最も初期の段階で妨害することで有効性が向上するだろうと我々は考えた。そこで、一生にわたってTEM細胞応答の典型的誘導体となることが知られているアカゲザル・サイトメガロウイルス(RhCMV)を使って、SIVタンパク質をコードするベクターを開発した。SIVのGag、Rev-Tat-NefおよびEnvを発現するRhCMVベクターは、RhCMVに対する免疫の存在には関係なく、アカゲザルに持続的感染を引き起こした。さらに中和抗体が存在しない場合は、SIV特異的でロバストなCD4+、CD8+TEM細胞応答(腫瘍壊死因子、インターフェロンγおよびMIP(macrophage inflammatory protein)1βの協調的な発現、細胞傷害性物質の脱顆粒と末梢での集積を特徴とする)が引き起こされ、維持された。対照と比較して、ワクチンを受けたアカゲザルは、限界量のウイルスを直腸内へ繰り返し攻撃接種した際の進行性SIVmac239感染の成立に対してより強い抵抗性を示し、そのうちの4匹では進行性の全身播種を起こすことなく、直腸粘膜で感染が食い止められた。これらの結果は、エイズワクチン開発の新しいパラダイム、つまりHIV特異的なTEM細胞を発生・維持させることが可能なワクチンは、性的接触後のHIVの感染成立の頻度を低下させるだろうことを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る