Technical Report 肥満:生理的自己制御法による肥満および糖尿病の分子療法 2009年4月1日 Nature Medicine 15, 4 doi: 10.1038/nm.1933 視床下部の脳由来神経栄養因子(BDNF)は、エネルギー収支の制御に重要な要素の1つである。今回我々は、肥満および糖尿病のマウスモデルで、遺伝子導入によりBDNF遺伝子の治療的影響を調べた。BDNF遺伝子の導入によって、顕著な体重減少と肥満関連インスリン抵抗性の緩和がみられた。臨床への導入を進めるため、また、体重減少の進み具合に適切に対応してBDNFタンパク質発現が減少し、悪液質が確実に防がれるようにするため、我々は分子自己制御系を開発した。この系には、BDNFを構成的に発現するカセットと、BDNFを特異的に標的とするマイクロRNAを発現するカセットの2つをもつ単一の組換えアデノ随伴ウイルスベクターが含まれている。マイクロRNA要素は、BDNFが誘導する生理的変化に応答するプロモーター(アグーチ関連ペプチドをコードするAgrp遺伝子を制御)によって制御される。そして、体重が減少してアグーチ関連タンパク質が誘導されると、マイクロRNA発現が活性化され、導入遺伝子の発現が抑制された。BDNF発現が制御されない方法を用いた場合には体重が連続的に減少するが、それとは対照的に、マイクロRNAを使うこの方法では、体重が十分に減少した後の体重変化は横ばい状態が維持された。この方法は、体に内在する生理的なフィードバック機構を模倣しており、それによって視床下部の設定値をリセットして肥満や代謝症候群を改善させている。 Full text PDF 目次へ戻る