Technical Report がん:臨床検体でがんタンパク質活性化を連続解析するためのナノ流体プロテオーム測定法 2009年5月14日 Nature Medicine 15, 5 doi: 10.1038/nm.1903 現行のタンパク質検出法は、重要ながんシグナル伝達過程を引き起こすがんタンパク質活性化の際のわずかな変化を検出するには感度が低い。また、多数の細胞を必要とするので、治療への反応を評価するための連続的な腫瘍検体採取が不可能である。そこで我々は、数ナノリットルのサンプル中の所定のタンパク質の全アイソフォーム量と量の少ないアイソフォームの量の両方を定量するためのナノ流体プロテオーム免疫測定法(nanofluidic proteomic immunoassay:NIA)を開発した。この手法によって、バーキットリンパ腫および濾胞性リンパ腫で、MYCがんタンパク質およびBCL2(B cell lymphoma protein-2)を定量できる。また、イマチニブを投与した慢性骨髄性白血病(CML)細胞で、細胞外シグナル制御キナーゼ1(ERK1)およびERK2、マイトジェン活性化キナーゼ1(MEK)、STAT3(signal transducer and activator of transcription protein-3)とSTAT5、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、カスパーゼ3の活性化における変化を明らかにできる。さらに、イマチニブに反応したCML患者でのERK2異性体のリン酸化における予想外の変化の測定や、アトルバスタチンを投与したリンパ腫患者でのSTAT3およびSTAT5のリン酸化低下の検出が可能である。したがってこれは、新しいがん治療法の開発のために臨床検体でのがんタンパク質の発現とリン酸化を測定する高感度の新手法となる。 Full text PDF 目次へ戻る