Letter 免疫:Wntシグナル伝達はエフェクターT細胞の分化を停止させ、CD8+記憶幹細胞を作り出す 2009年7月1日 Nature Medicine 15, 7 doi: 10.1038/nm.1982 造血幹細胞、記憶Bリンパ球や記憶Tリンパ球のような自己複製する細胞集団は、共通のシグナル伝達経路によって調節されている可能性がある。Wnt−β-カテニン経路は進化的に保存された経路で、幹細胞の増殖や分化の制限によって、造血幹細胞に自己複製と多能性を維持させるが、この経路が記憶T細胞の生成と維持に担う役割は知られていない。我々は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3βの阻害物質あるいはWntタンパク質ファミリーに属するWnt3aによってWnt−β-カテニンシグナル伝達経路を誘導すると、CD8+T細胞のエフェクター細胞への分化が停止することを見いだした。Wntシグナル伝達は、T細胞の分化阻害によって、CD44lowCD62LhighSca-1highCD122highBcl-2highで自己複製し多能性をもつCD8+記憶幹細胞の生成を促進した。この細胞の増殖能と抗腫瘍能は、セントラル記憶T細胞およびエフェクター記憶T細胞サブセットを上回っていた。これらの知見は、Wntシグナル伝達経路が成熟記憶CD8+T細胞の「幹細胞性」の維持に重要な役割を担うことを明らかにしており、新しいワクチン戦略や養子免疫療法の設計に大きなかかわりがある。 Full text PDF 目次へ戻る