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がん:発がん性タンパク質EWS-FLI1のRNAヘリカーゼAとの相互作用を阻害する低分子化合物はユーイング肉腫の増殖を抑制する

Nature Medicine 15, 7 doi: 10.1038/nm.1983

肉腫および白血病細胞の多くは、腫瘍特異的な変異型融合転写因子をコードする、ランダムでない染色体転座をもち、これらは分子レベルでの病態形成に不可欠である。ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)では特徴的なt(11;22)転座がみられ、これが発がん性の融合タンパク質EWS-FLI1の発現につながる。EWS-FLI1は、構造に基づく標準的な低分子阻害剤設計を難しくする、秩序性のない構造をもつタンパク質である。そして、EWS-FLI1のRNAヘリカーゼA(RHA)への結合は、その発がん作用に重要である。それゆえ我々は、表面プラズモン共鳴を用いるスクリーニングによって、EWS-FLI1に結合してRHAとの相互作用を阻害する可能性のある化合物の同定を行った。このスクリーニングから得られたリード化合物の誘導体であるYK-4-279は、EWS-FLI1のRHAへの結合を阻害し、ESFT細胞にアポトーシスを誘導し、また同所性に異種間移植されたESFTの増殖を抑える。これらの知見は、がん特異的な変異型転写因子と細胞中の本来の結合パートナーとの間の発がん活性に必要な相互作用の阻害が、独自の有効性をもつ腫瘍特異的抗がん剤開発の有望な方法となることの原理証明である。

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