エンテロウイルス71(EV71)は、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属ヒトエンテロウイルスA種群に属する。EV71は、コクサッキーウイルスA16(CVA16)とともに手足口病(HFMD)に非常に高い頻度で関係している。HFMDは軽い発疹性感染と考えられているが、EV71がかかわる感染は、致死性脳炎、無菌性髄膜炎および急性弛緩性麻痺といった重篤な神経性疾患へと進行する場合がある。しかし、CVA16ではこのようなことはない。近年、神経毒性が強いEV71の流行および散発的な発生の急増が台湾、マレーシア、シンガポール、日本および中国で報告されている。今回我々は、ヒトスカベンジャー受容体クラスBメンバー2(SCARB2、もしくはlysosomal integral membrane protein IIやCD36b like-2としても知られる)がEV71の受容体であることを示す。EV71は、可溶型SCARB2もしくはSCARB2発現細胞と結合し、この結合はSCARB2に対する抗体によって阻害される。ヒトSCARB2の発現により、本来ならば非感受性の細胞株がEV71の増殖を支持し、細胞変性効果を示すようになった。EV71感染は、SCARB2に対する抗体および可溶型SCARB2により阻止された。またSCARB2は、より弱毒性の病原体CVA16の感染も可能にした。SCARB2をEV71とCVA16の受容体として同定したことは、これらウイルスの病原性の解明を進めるのに役立つ。