Letter HIV:マカクザル粘膜への少量のSHIVの反復的攻撃接種に対する防御に有効な低力価抗体 2009年8月1日 Nature Medicine 15, 8 doi: 10.1038/nm.1974 中和抗体はHIVワクチンによる予防に重要だと考えられているが、動物モデルでの研究では高濃度の抗体が必要であることが示唆されている。このことは、ワクチン設計上の大きな障害となる可能性がある。しかし、こうした研究では、単回の攻撃接種実験で対照群の動物に確実に感染を起こさせるために大量のウイルス接種を行うのが普通である。これに対して、ヒトでの性接触による感染の多くは、もっと少量のウイルスに対する反復的暴露によると考えられる。したがって、動物実験はヒトでの予防に必要とされる抗体量を過大評価している可能性がある。我々は、in vitroで比較的低い中和抗体価に相当する血漿抗体濃度が、CCケモカイン受容体5を共受容体とする少量のSHIV(サル免疫不全ウイルス/HIVキメラウイルス)のマカクザルに対する経膣的反復暴露に防御効果をもつかどうかを検討した。中和抗体のエフェクター機能を欠く変異体についてもあわせて検討を行った。その結果、中和抗体を投与したマカクザルに感染を起こさせるには、対照抗体を投与したマカクザルよりもかなり多くの回数の攻撃接種が必要であることが示され、エフェクター機能が抗体による予防効果にかかわっていることが裏付けられた。以上の結果は、ヒトがHIV-1に暴露される典型的な状況においては、これまで予防効果を示すと考えられていた量よりも少量の抗体で有効である可能性を示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る