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嚢胞腎:Wnt-βカテニンシグナル伝達の障害は成体の腎臓の恒常性を損ない、繊毛関連疾患である嚢胞腎につながる

Nature Medicine 15, 9 doi: 10.1038/nm.2010

嚢胞性腎疾患は末期腎不全の大きな原因の1つだが、その発症の分子機序はほとんど明らかになっていない。最近、標準的なWntシグナル伝達がこれにかかわる可能性が強調されているが、成体腎臓の恒常性におけるこの経路の働きについては調べられていない。本論文では、成体哺乳類腎臓の恒常性に、これまで明らかになっていなかった標準的なWnt活性がかかわっていることの証拠と、この活性が失われると嚢胞性腎疾患につながることを示す。マウスでのJouberin(Jbn)タンパク質の喪失は、内因性Wnt活性の予想外の低下につながり、その結果、嚢胞性腎疾患であるネフロン癆を引き起こす。Jbnはβカテニンと相互作用し、その核蓄積を促進するため、下流の転写を正に調節することになる。また、Jbnがin vivoで損傷や細尿管修復に対するWnt応答に必要とされること、また、Wnt応答の欠損は嚢胞形成を引き起こすことを示す。

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