Letter

糖尿病:インスリン抵抗性における脂肪組織p53の極めて重要な役割

Nature Medicine 15, 9 doi: 10.1038/nm.2014

テロメアの機能不全や酸化ストレスといったさまざまな刺激は、不可逆的な細胞増殖停止を誘導することがあり、これは細胞老化と呼ばれる。この反応は、p53やpRbのような腫瘍抑制タンパク質によって制御されている。また、老化細胞が加齢変化や老化にかかわる疾患を促進するという証拠もある。本論文では、脂肪組織におけるp53の発現が、加齢に伴う循環器および代謝性疾患の根底にあるインスリン抵抗性の増大に極めて密接に関与することを示す。我々は、過剰なカロリー摂取が、2型糖尿病様の病態を示すマウスの脂肪組織に酸化ストレスをもたらし、また老化関連β-ガラクトシダーゼの活性増強、p53の発現増加、炎症性サイトカインの産生増大といった老化に似た変化を促進することを見いだした。脂肪組織でのp53の阻害により、これらの老化様変化が顕著に緩和され、炎症性サイトカインの発現が減少し、2型糖尿病様の病態を示すマウスのインスリン抵抗性が改善された。反対に、脂肪組織におけるp53の発現増加は、インスリン抵抗性につながる炎症反応を引き起こした。糖尿病患者由来の脂肪組織もまた老化に似た特徴を示した。今回の結果は、脂肪組織のp53発現の、インスリン抵抗性調節における今まで認識されていなかった役割を明らかにし、また脂肪組織の細胞老化シグナルが糖尿病治療の新たな標的となる可能性を示唆している。

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