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がん:ヒト結腸の共生細菌は17型ヘルパーT細胞のT細胞応答活性化を介して結腸の腫瘍形成を促進する

Nature Medicine 15, 9 doi: 10.1038/nm.2015

腸内細菌叢は、結腸の腫瘍形成を促進する可能性がある。今回我々は、ヒト結腸に存在する細菌である腸内毒素産生性Bacteroides fragilis(ETBF)による結腸での発がんの免疫学的機構を調べた。B. fragilis毒素(BFT)を分泌するETBFは、ヒトに炎症性の下痢を引き起こすばかりでなく、ヒト集団の一部に無症候性に定着している。ETBF、および毒素を産生しないB. fragilis(NTBF)は両方ともにマウスに慢性的に定着するが、ETBFだけが腸炎を引き起こし、Min(multiple intestinal neoplasia)マウスで結腸腫瘍を強力に誘発することが示された。ETBFは結腸で、CD4+ T細胞受容体αβ+(TCRαβ+)T細胞とCD4-8- TCRγδ+T細胞の両方で起こる選択的17型ヘルパーT(TH17)応答を特徴とする腸炎に伴って、強力で選択的なStat3(signal transducer and activator of transcription-3)活性化を誘導する。インターロイキン17(IL-17)の抗体による遮断、およびTH17応答を増強する重要なサイトカインであるIL-23の受容体の抗体による遮断は、ETBF誘導性の腸炎、結腸の過形成、および腫瘍形成を防止する。これらの結果は、ヒトの一般的な共生細菌による炎症が誘導するがんにおけるStat3およびTH17依存性経路を明らかにし、ヒト結腸での発がん機構について新たな手がかりを与える。

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