Letter 糖新生:クリプトクロムはcAMPシグナル伝達および肝臓での糖新生の概日時計による調節を仲介する 2010年10月1日 Nature Medicine 16, 10 doi: 10.1038/nm.2214 哺乳類は、絶食時には肝臓での糖新生を促進することで正常なグルコース恒常性を維持している。肝臓での糖新生を活性化する2種類のホルモンであるグルカゴンとエピネフリンの血中濃度が上昇すると、Creb(cAMP response element−binding protein)のcAMPを介したリン酸化、およびCrtc2(Creb-regulated transcription coactivator-2)の脱リン酸化が引き起こされる。CrebとCrtc2は、この過程で働く主要な転写調節因子である。基盤となる機構は明らかではないが、肝臓での糖新生は概日時計によっても調節されており、概日時計はグルコース代謝と外部環境の変化を協調させている。遺伝子発現の概日時計による制御は、ClockおよびBmal1という2つの転写活性化因子によって行われている。ClockとBmal1はクリプトクロム(Cry1およびCry2)やPeriod(Per1、Per2およびPer3)抑制因子を刺激し、これらがClock-Bmal1活性をフィードバック調節する。本論文では、絶食時のCreb活性が、肝臓で周期的に発現するCry1およびCry2によって調節されていることを示す。Cry1発現は夜から昼への移行時に上昇し、細胞内cAMP濃度およびプロテインキナーゼAを介するCrebリン酸化のグルカゴンを介した増加を遮断することで、絶食時の糖新生にかかわる遺伝子の発現を低下させた。生化学的な再構成実験系で、Cry1がGタンパク質共役型受容体(GPCR)活性化に応答して起こるcAMP蓄積を抑制するが、アデニルシクラーゼを直接活性化するフォルスコリンに応答して起こる蓄積は抑制しないことがわかった。Cryタンパク質は、Gsαとの相互作用を介してGPCR活性を直接調節するらしい。インスリン抵抗性のdb/dbマウスでは、肝臓でのCry1の過剰発現によって血中グルコース濃度が低下し、インスリン感受性が改善するので、我々の結果はクリプトクロム活性を高める化合物が2型糖尿病患者に治療効果をもたらす可能性を示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る