Article がん:miR-380-5pはp53を抑制して細胞の生存を制御し、MYCN増幅がみられる神経芽細胞腫の予後不良に関連している 2010年10月1日 Nature Medicine 16, 10 doi: 10.1038/nm.2227 p53腫瘍抑制経路の不活性化はストレス時の細胞生存を可能にし、この不活性化は多くのヒトがんで認められる。しかし、正常な胚性幹細胞や神経芽細胞腫のような一部のがんは、野生型のヒトTP53やマウスTrp53(ここではまとめてp53とよぶ)を保持している。本論文ではmiRNAの1つであるmiR-380-5pが、p53の3′非翻訳領域内の保存された塩基配列を介してp53の発現を抑制することを述べる。miR-380-5pはマウスの胚性幹細胞や神経芽細胞腫で強く発現し、その高発現はMYCN(v-myc myelocytomatosis viral-related oncogene, neuroblastoma derived)遺伝子の増幅がみられる神経芽細胞腫の予後不良と関係している。miR-380の過剰発現は活性化型HRASがんタンパク質と協同的に働いて初代培養細胞を形質転換し、がん遺伝子誘発性細胞老化を阻止し、マウスに腫瘍を形成する。反対に、胚性幹細胞あるいは神経芽細胞腫細胞で内因性のmiR-380-5pを阻害すると、p53が誘導されて大規模なアポトーシス細胞死が起こる。神経芽細胞腫の同所性マウスモデルでは、in vivoでmiR-380-5pのアンタゴニストを送達すると腫瘍サイズが縮小する。以上の結果は、がんや幹細胞におけるp53制御の新しい機序を示すとともに、神経芽細胞腫の治療標的候補を明らかにしている。 Full text PDF 目次へ戻る