Technical Report

細胞技術:複数種の正常なヒト上皮に由来する浸潤性の三次元器官培養腫瘍

Nature Medicine 16, 12 doi: 10.1038/nm.2265

急増しつつあるがん治療薬標的候補を、臨床に直接関連しかつ所要時間が短くてすむ状況下で評価しようとするならば、正確さに優れたがんモデルが必要となる。今回我々は、表皮、中咽頭、食道、頸部に由来する初代培養ヒト上皮細胞を、腫瘍に関連する遺伝的経路を用いて形質転換させ、細胞を包埋した間質と無傷基底膜とを組み込んだヒト三次元(3D)組織環境内で遺伝学的に明確な性質をもつ腫瘍とした。これらの人工的な器官培養組織では、ヒトがんの90%で生物学的悪性化に必要な複雑な過程である、基底膜を通り抜ける上皮浸潤などの、腫瘍進行がもつ特性が再現された。浸潤は迅速で、間質細胞によって促進された。3D組織でみられる腫瘍形成シグナルは、ヒトの自然発生がんでみられる遺伝子発現プロファイルに似ていたが、2D培養組織でみられるシグナルは似ていなかった。特徴のよくわかっているシグナル伝達経路阻害物質を使った3D器官培養腫瘍のスクリーニングによって、臨床がんそのままの遺伝子特性の1つが抽出された。多組織3Dヒト組織がんモデルは、現在のがん進行特性解析の取り組みを有効かつ適切に補足する手段の1つになるかもしれない。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度