Letter 炎症:レゾルビンであるRvE1とRvD1は中枢および末梢での作用により炎症性疼痛を軽減する 2009年5月1日 Nature Medicine 16, 5 doi: 10.1038/nm.2123 関節炎の痛みなどの炎症性疼痛は拡大しつつある健康問題である。炎症性疼痛の治療には、一般にオピオイド類やシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤が使われるが、これらは共にその副作用によって使用が制限される。レゾルビンは脂質メディエーターの独特のファミリーで、ω3多価不飽和脂肪酸に由来するRvE1やRvD1などが含まれる。最近、このレゾルビンが、炎症に関連する症状の治療に著しい効力を示すことが明らかになってきた。本論文では、マウスでホルマリン、カラギーナンあるいはフロイント完全アジュバントの足底注入によって惹起される炎症性疼痛関連行動が、RvE1あるいはRvD1の末梢(足底内)、あるいは脊髄(髄腔内)投与によって大幅に減少するが、基準的な疼痛知覚には影響がないことを報告する。また、RvE1の髄腔内注射によって、髄腔内のカプサイシンや腫瘍壊死因子α(TNF-α)によって引き起こされる自発的疼痛や発熱、また機械刺激に対する過敏症も抑制される。RvE1は好中球浸潤や足浮腫の低減、および炎症促進性サイトカイン発現低下により抗炎症活性を示す。また、RvE1も、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)シグナル伝達経路の阻害を介して、脊髄後角ニューロンでTRPV1(transient receptor potential vanilloid subtype-1)やTNF-αによって誘導される興奮性シナプス後電流の増加、またTNF-αによって引き起こされるN-メチル-D-アスパラギン酸受容体の過剰活性化を消失させる。したがって、レゾルビンは痛覚過敏の発生に関与していると考えられる脊髄シナプスの可塑性正常化に、これまで知られていなかった役割を担っていることが示された。レゾルビンの効力とオピオイド類やCOX阻害剤のよく知られている副作用を考えると、レゾルビンは炎症性疼痛の治療に使える新しい鎮痛剤となるかもしれない。 Full text PDF 目次へ戻る