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免疫:CD8+ T細胞の転写状態の特徴から自己免疫疾患の予後が予測される

Nature Medicine 16, 5 doi: 10.1038/nm.2130

自己免疫疾患は広くみられる衰弱性の疾患だが、有害となりそうな免疫抑制療法を個別に調整できるバイオマーカーが使用可能ならば、その重篤な症状を緩和できるかもしれない。がんでは化学療法のこのような調整を容易にする、遺伝子発現に基づくバイオマーカーが同定され、臨床診療に転用されているが、自己免疫疾患ではこのようなマーカーはまだ存在しない。本論文では、中程度から小さいサイズの血管の炎症を特徴とする慢性的で重篤な疾患である抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)と、自己抗体、免疫複合体沈着と糸球体腎炎から神経機能障害に及ぶ幅広い臨床症状を特徴とする全身性エリテマトーデス(SLE)という2つの自己免疫疾患で、未分離細胞の複雑な影響を除いた精製CD8+ T細胞の転写プロファイリングにより、長期的な予後予測の異なる2つの患者サブグループが識別されたことを示す。予後不良群を特定する遺伝子群には、インターロイキン7受容体経路とT細胞受容体シグナル伝達に関与する遺伝子および記憶T細胞に発現する遺伝子が多いことがわかった。さらにこの予後不良グループは、記憶CD8+ T細胞集団の増殖と関連していた。健常なヒト集団にも認められ、また3つの遺伝子のみの発現測定により特定可能なこのサブグループは、個別化治療の見込みを高め、また自己免疫疾患における新たな治療標的となる可能性がある。

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