Article 免疫:抗原変異の阻害は有効な寄生虫ワクチン作製にきわめて重要である 2009年5月1日 Nature Medicine 16, 5 doi: 10.1038/nm.2141 ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)は、ヒト腸管に寄生する病原体である。Giardiaは、多くの原生動物門の微生物と同様に、抗原変異を起こす。寄生虫はこの機序によって宿主の免疫応答から逃れ、慢性感染や反復感染をもたらすと考えられている。最近我々は、Giardiaの変異型特異的表面タンパク質(VSP)の切り替えを制御する機序にRNA干渉装置の構成因子がかかわっていること、この経路の阻害により、多数のVSPを同時に発現する栄養型が生み出されることを見いだした。本論文では、このような変化した栄養型を用いて、ジアルジア症のアレチネズミ・モデルにおける抗原変異の役割を決定した。今回の結果から、多数のVSPを同時に発現している栄養型による初回感染、もしくはトランスジェニック細胞由来の精製VSPを用いた免疫が、アレチネズミをその後のGiardia感染から防御することがわかった。これらの結果は、抗原変異が宿主内での寄生虫の生存に不可欠であることを示し、またこの機序の人為的阻害が同様な挙動を示す主要な病原体に対するワクチン作製に有用である可能性を示した、我々の知る限りで最初の実験的証拠である。 Full text PDF 目次へ戻る