Article 腎疾患:上皮細胞のG2/Mでの細胞周期停止が損傷後の腎繊維症を誘導する 2009年5月1日 Nature Medicine 16, 5 doi: 10.1038/nm.2144 繊維症は、先進国の成人に多数みられる慢性進行性腎不全の原因となる。急性腎損傷(AKI)は異常な不完全修復という結果を生じることがあり、これは慢性繊維性腎疾患の主要因の1つと認められるようになった。損傷後に繊維形成応答をもたらす機構は十分にはわかっていない。我々は、AKIの虚血性、中毒性、および閉塞性モデルで、上皮細胞の細胞周期G2/Mでの停止と繊維化という転帰の間の因果関係を明らかにした。G2/Mで停止した近位尿細管細胞は、c-junアミノ末端キナーゼ(JNK)シグナル伝達を活性化し、これが繊維形成性サイトカイン産生を増加させる。JNK阻害剤処理、あるいはp53阻害剤の投与や対側腎摘出によりG2/M停止を回避すると、片側虚血性損傷腎における繊維化が救済される。すなわち、G2/Mにおける上皮細胞周期の停止とそれに続く下流シグナル伝達は、繊維化の予防と腎疾患の進行促進防止のためのこれまで認識されていなかった治療標的となる。 Full text PDF 目次へ戻る