Article がん:Apcmin/+マウスでのERK活性化は腸腫瘍を発生させる 2010年6月1日 Nature Medicine 16, 6 doi: 10.1038/nm.2143 Apcmin/+マウスでの腸腫瘍発生には、Toll様受容体(TLR)を介したシグナル伝達が必須であるが、Apcが腫瘍増殖を亢進する機序は明らかではない。今回我々は、腸上皮細胞(IEC)での微生物叢-MyD88-ERKシグナル伝達は、がんタンパク質c-Mycの安定性増大により腫瘍発生を促進することを示す。細胞外シグナル調節キナーゼ(extracellular signal-related kinase;ERK)の活性化によってc-Mycがリン酸化され、そのユビキチン化とそれに続くプロテアソーム分解が防止される。そのためApcmin/+/Myd88−/−マウスは、Apcmin/+マウスに比べて、リン酸化型ERK(p-ERK)濃度が低く、IEC腫瘍の数とサイズが低減する。Apcmin/+/Myd88−/−マウスで、上皮増殖因子(EGF)により、MyD88(myeloid differentiation primary response gene 88)非依存的にERK活性化を起こすと、p-ERKおよびc-Mycが増加し、多発性腸腫瘍の表現型が再び認められるようになった。EGFを投与したApcmin/+/Myd88−/−マウスおよびApcmin/+マウスにERK阻害剤を投与すると腸腫瘍発生が抑制され、生存個体数が増えた。今回の結果は、微生物叢によるTLR活性化が、感受性をもつ宿主でのがん遺伝子発現とそれに関連するIEC腫瘍の増殖を調節しているという、がん遺伝子と環境間の相互作用の新たな側面を明らかにしている。 Full text PDF 目次へ戻る