Article 関節症:骨格成長や変形性関節症発症の過程でのHIF-2αによる軟骨内骨化の転写調節 2010年6月1日 Nature Medicine 16, 6 doi: 10.1038/nm.2146 軟骨細胞の肥大、それに続く軟骨基質の破壊や血管の進入はそれぞれ、X型コラーゲン(COL10A1)、マトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP-13)および血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を特徴としており、正常な骨格成長や変形性関節症発症の過程での軟骨内骨化の中心となる段階である。COL10A1プロモーターの解析によって、低酸素誘導因子2α(HIF-2α、EPAS1にコードされる)がCOL10A1の最も強力な転写活性化因子であることが明らかになった。HIF2-αは、COL10A1、MMP13およびVEGFAそれぞれがもつ低酸素応答エレメントへ特異的に結合することでプロモーター活性を高める。酸素依存的な水酸化とは無関係に、HIF-2αは培養軟骨細胞の軟骨内骨化や、マウス胎仔での骨格成長に不可欠であった。HIF-2αの発現は、マウスやヒトの健常な軟骨よりも、変形性関節症の軟骨の方で高かった。Epas1ヘテロ欠損マウスは、変形性関節症の発症に抵抗性を示した。また、ヒトEPAS1遺伝子の機能的な一塩基多型(SNP)は、日本人集団で変形性膝関節症と関連していた。EPAS1プロモーターの解析から、NF-κ B(nuclear factor-κB)ファミリーに属するRELAがHIF-2α発現の強力な誘導因子であることが明らかにされた。したがって、HIF-2αは軟骨内骨化に重要な複数の遺伝子を標的とする中心的な転写活性化因子であり、また、変形性関節症の治療標的として期待される。 Full text PDF 目次へ戻る