Article がん:ゲノム全体にわたるRNA干渉スクリーニングによって明らかになった悪性神経膠腫に不可欠なCREB3L2-ATF5-MCL1生存経路とその治療へのかかわり 2010年6月1日 Nature Medicine 16, 6 doi: 10.1038/nm.2158 ATF5(Activating transcription factor-5)は悪性神経膠腫で高度に発現しており、細胞の生存促進に重要な役割を担っている。我々は、ATF5の転写調節因子を同定するためにゲノム全体にわたるRNAiスクリーニングを行い、悪性神経膠腫に不可欠な生存経路を明らかにした。この経路では、RAS−マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、あるいはホスフォイノシチド-3-キナーゼシグナル伝達カスケードの活性化が、転写因子であるCREB3L2(cAMP response element−binding protein-3−like-2)を誘導し、これが直接ATF5発現を活性化する。ATF5はさらに、抗アポトーシス作用をもつBcl(B cell leukemia)2ファミリーに属する、MCL1(myeloid cell leukemia sequence-1)の転写を刺激することで生存を促進する。ヒトの悪性神経膠腫の試料の解析から、ATF5の発現が疾患の予後と逆相関することが示された。RAFキナーゼ阻害剤であるソラフェニブは神経膠腫幹細胞でATF5発現を抑制し、培養細胞およびマウスモデルで悪性神経膠腫の増殖を阻害する。今回の結果は、ATF5が悪性神経膠腫の発生に不可欠であることを示しており、また、上記のATF5を介する生存経路が悪性神経膠腫治療の標的となる可能性を明らかにしている。 Full text PDF 目次へ戻る