Technical Report

臓器工学:脱細胞化肝臓マトリックスを用いた移植可能な再細胞化肝臓片の開発による臓器再構築

Nature Medicine 16, 7 doi: 10.1038/nm.2170

同所性肝移植は重度の肝不全に対して唯一可能な治療法だが、現在のところ提供臓器の不足がネックとなっている。これまで組織工学的な肝臓片作製法の開発を妨げてきた技術上の難問の1つは、酸素および栄養素の輸送である。今回我々は、ラットの脱細胞化した肝臓細胞外マトリックスを用いて移植可能な肝臓片を作製するための新規の手法を報告する。この脱細胞化処理では、微小血管網の本来の構造および機能の特性が維持され、したがって、得られた肝臓マトリックスへの成体肝細胞の高効率な再導入と、in vitro培養のための灌流を行うことができる。再細胞化した肝臓片は、in vitroの正常肝臓に匹敵するレベルで、アルブミン分泌や尿素合成、シトクロムP450発現などの肝臓特異的な機能を維持する。また、再細胞化した肝臓片はラットへ移植可能で、肝細胞の生存と機能が維持され、虚血性損傷は最小限に抑えられる。これらの結果は、移植可能な肝臓片の作製が肝疾患の治療法となりうることを示す原理証明となる。

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