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腎疾患:グルコシルセラミド蓄積の阻害は多発性嚢胞腎マウスモデルで病状を効果的に抑制する

Nature Medicine 16, 7 doi: 10.1038/nm.2171

多発性嚢胞腎(PKD)は、腎臓での嚢胞増殖と腎不全への進行を特徴とする一群の遺伝性疾患である。PKD患者に適用可能な治療法は現在のところ存在しないが、効果が見込まれる治療介入が見つかりつつある。PKDは遺伝的および臨床的に多様だが、嚢胞上皮の障害が共通しており、それらには増殖の亢進、アポトーシスと増殖調節経路の活性化などが含まれる。スフィンゴ脂質およびスフィンゴ糖脂質は、このような細胞過程の主要調節因子であることが明らかになってきている。我々は、PKDの新規治療法として、スフィンゴ糖脂質の修飾がもつ治療可能性の評価を試みた。本論文では、ヒトとマウスのPKDでは、腎臓のグルコシルセラミド(GlcCer)およびガングリオシドGM3濃度が、どんな変異が疾患原因となっているのかとは関係なく、正常組織よりも高いことを明らかにする。GlcCer合成酵素阻害剤Genz-123346によってGlcCer蓄積を阻害すると、ヒトの常染色体優性遺伝性PKDのオルソログ(Pkd1の条件ノックアウトマウス)ならびにネフロン癆のオルソログ(jckおよびpcyマウス)であるマウスモデルで嚢胞形成が効果的に阻害される。in vitroおよびin vivoでの分子解析では、Genz-123346はPKDで調節不全に陥っている2つの重要な経路であるAktプロテインキナーゼ‐mTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル伝達と細胞周期装置の阻害を介して作用することが示された。以上を総合すると今回のデータは、GlcCerの合成阻害がPKDに対して有効な新規治療選択肢となることを示唆している。

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