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中枢神経系損傷モデルとされる変異マウスを検証する

Nature Medicine 16, 8 doi: 10.1038/nm0810-860

脳や脊髄の損傷後に神経軸索が再生される率は極めて低く、この再生率の低さの一因はNogo、MAG(myelin-associated glycoprotein)、OMgp(oligodendrocyte myelin glycoprotein)という3つの主要な髄鞘関連阻害因子にあると考えられてきた。特異的抗体によるNogoのin vivoでの阻害では有望な結果が得られているが、軸索再生でのNogo、MAGおよびOMgpの役割や、この3つの相乗効果についてはまだよくわかっていない。J K Leeたちは、これら3種類のタンパク質をコードする遺伝子を欠失するマウスを使ってこの問題に取り組んだ。この3つの阻害因子のうちのどれか1つが欠失すると、損傷を受けていない軸索と損傷軸索の両方で発芽が起こったが、三重変異体では軸索の再生や行動の改善は観察されず、相乗効果もみられなかった。この結果から、これらのタンパク質が神経系損傷の治療に効果を発揮する可能性は限られたものになると考えられる。だが、最近行われたまた別の研究では、これとよく似たマウスモデルで大規模な再生と機能回復が報告された。こうした相反する研究結果について、専門家の意見を訊ねてみた。

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