Technical Report 免疫:多様なヒトT細胞抗原受容体レパートリーをもつトランスジェニックマウス 2010年9月10日 Nature Medicine 16, 9 doi: 10.1038/nm.2197 免疫寛容が存在するために、自己抗原(腫瘍抗原など)に対して高いアビディティを示すT細胞のT細胞受容体(TCR)の同定は難しい。マウスでは、免疫非寛容なT細胞のレパートリーから、外来性であるヒト抗原に特異的なTCRを同定することができる。さらに、ヒトTCRレパートリーを発現するようなマウスを作出すれば、ヒト自己抗原に対する偏向のないレパートリーを解析するのに使える。今回我々は、ヒトTCRαβ遺伝子座位全体(1.1および0.7 Mb)をもつトランスジェニックマウスを作出した。このマウスのT細胞は、多様なヒトTCRレパートリーを発現し、マウスTCRの欠損を補償する。ヒト主要組織適合性クラスI遺伝子を導入すると、ヒトTCRをもつCD8+ T細胞のほうがマウスTCRをもつ細胞よりも産生数が増える。数種類のヒト腫瘍抗原に対して機能するCD8+ T細胞が誘導され、メランAメラノーマ抗原に対するCD8+ T細胞は、自己免疫性白班もしくはメラノーマ患者由来のT細胞クローンでみられるT細胞のものに似たTCRを用いていた。これらのマウスによって、病原性ヒトTCRや治療用ヒトTCRの同定が可能になると考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る