Letter 腎疾患:足細胞から分泌されるアンギオポエチン様因子4は、グルココルチコイド感受性のネフローゼ症候群でのタンパク尿発生に関与する 2011年1月1日 Nature Medicine 17, 1 doi: 10.1038/nm.2261 ネフローゼ症候群の主徴は、タンパク尿、低アルブミン血症、浮腫、高脂血症および脂質尿である。ネフローゼ症候群の一般的な原因としては、糖尿病性腎症、微小変化群(MCD)、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)および膜性腎症があげられる。一次性糸球体疾患の中で、MCDは一般にグルココルチコイド治療に感受性を示すが、それ以外の病型では応答は多様である。限外濾過障害に関与すると考えられている糸球体毛細管係蹄で重要な役割を果たす構造タンパク質が同定されたにもかかわらず、ネフローゼ症候群の発症機構の多くはまだ解明されていない。本研究では、分泌型糖タンパク質であるアンギオポエチン様因子4(angiopoietin-like-4; Angptl4)の糸球体での発現はグルココルチコイド感受性であり、MCDの実験モデルおよびヒト患者の血清と足細胞ではAngptl4の発現が著しく増大していることを示す。ラットで足細胞特異的に遺伝子導入したAngptl4(NPHS2-Angptl4)を過剰発現させると、尿タンパクに選択性がみられるネフローゼ域のタンパク尿(アルブミン尿で500倍以上の上昇)、糸球体基底膜(GBM)荷電の消失および足突起の消失が誘発された。これに対して、脂肪組織特異的に遺伝子導入したAngptl4(aP2-Angptl4)を発現させると、循環血中のAngptl4は増加したが、タンパク尿は認められなかった。リポ多糖(LPS)または腎炎惹起性抗血清を投与したAngptl4−/−マウスでは、対照マウスと比較してタンパク尿の発生が著しく減少した。ネフローゼ症候群の病型の中には、足細胞から分泌されたAngptl4に正常なシアル酸付加が行われていないものもある。NPHS2-Angptl4導入ラットにシアル酸の前駆体であるN-アセチル-D-マンノサミン(ManNAc)を食餌として摂取させると、Angptl4のシアリル化が促進され、アルブミン尿が40%以上減少した。今回の結果は、足細胞が分泌するAngptl4がネフローゼ症候群で重要な役割を担っていることを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る