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抗血栓症治療薬:パラオキソナーゼ1はクロピドグレルの効力を規定する主要因子である

Nature Medicine 17, 1 doi: 10.1038/nm.2281

抗血小板薬クロピドグレルの臨床効力は、活性型代謝物への生物変換が変動することで妨げられる。クロピドグレル投与に対する臨床応答のばらつきは遺伝的因子に起因すると考えられてきたが、クロピドグレル生体内活性化の基盤となる特定の遺伝子や機構は明らかにされていない。我々はin vitroメタボロミクスプロファイリング技術を使って、パラオキソナーゼ1(PON1)がクロピドグレル生体内活性化に重要な酵素であり、広くみられるそのQ192R多型が活性型代謝物の生成速度を決めることを突き止めた。さらに、ステント留置の後にクロピドグレル投与を受けている冠動脈疾患患者集団でPON1Q192R遺伝子型の臨床的意義を検証した。PON1QQ192ホモ接合個体はRR192ホモ接合個体に比べてステント血栓症のリスクがかなり高く、PON1血漿活性は低く、活性型代謝物の血漿中濃度および血小板凝集阻害も低かった。したがって、我々はPON1をクロピドグレルの生体内活性化と臨床活性の重要な因子であると同定した。以上の結果は治療に密接なかかわりがあり、クロピドグレルの臨床効力を前もって評価するのに使えると考えられる。

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