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肝疾患:慢性肝疾患での、5-HT2B受容体を標的とすることによる健康組織再生促進

Nature Medicine 17, 12 doi: 10.1038/nm.2490

組織の恒常性維持には、損傷に対する有効で限定的な創傷治癒応答が必要である。慢性疾患で実質組織に生じた再生障害は、消失した細胞が繊維マトリックスによって置換される原因となる。細胞再生と繊維形成のバランスを左右する機序はよく解明されていない。今回我々は、肝臓中にあって繊維形成性の肝臓星細胞(HSC)が、肝細胞再生の負の調節因子であることを報告する。この負の調節機能には、HSCの5-ヒドロキシトリプタミン2B受容体(5-HT2B)のセロトニンによる刺激が必要であり、これがマイトジェン活性化プロテインキナーゼ1および転写因子JunDによるシグナル伝達を介して、肝細胞増殖の強力な抑制因子であるトランスフォーミング増殖因子β1発現を活性化する。5-HT2Bの選択的アゴニストは、急性および慢性の肝傷害モデルで肝細胞の増殖を促進した。同様の影響は、5-HT2BまたはJunDを欠損するマウス、またはHSCを選択的に枯渇させた野生型マウスでも見られた。繊維症がすでに発症して進行中の疾患モデルでは、5-HT2Bに対するアンタゴニストは繊維形成を低減し、肝機能を向上させた。ヒトで5-HT2Bを薬理的標的とすることは臨床上安全であり、慢性肝疾患の治療法として期待される。

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