Article

がん:多様な耐性を生じる複数の経路の下流に
存在する共通の合流点SRCを標的として
トラスツズマブ耐性を克服する

Nature Medicine 17, 4 doi: 10.1038/nm.2309

トラスツズマブは、ERBB2を標的として合理的に設計された分子治療薬で成功を収めている。しかし、ERBB2を過剰発現する乳がん患者のおよそ半分は、さまざまな薬剤耐性機構のためにトラスツズマブをベースとする治療に反応しない。多様な機構から生じるトラスツズマブ耐性を克服する臨床応用可能な方法はまだない。本論文では、非受容体型チロシンキナーゼc-SRC(SRC)が、トラスツズマブに対する反応の主要なモジュレーターであり、複数のトラスツズマブ耐性経路の下流に存在する共通の合流点であることを示す。SRCは、トラスツズマブ耐性を獲得した細胞、およびde novoトラスツズマブ耐性細胞の両方で活性化されていることがわかり、PTENによる脱リン酸化がかかわる新規のSRC調節機構が明らかになった。SRC活性化の増強は、乳がん細胞にかなりのトラスツズマブ耐性を付与し、また患者のトラスツズマブ耐性と相関していた。トラスツズマブとSRC標的療法を併用すると、複数のトラスツズマブ耐性細胞株がトラスツズマブ感受性となり、またin vivoでトラスツズマブ耐性腫瘍が消失したことから、トラスツズマブ耐性を克服するこの戦略は、臨床応用可能であろうと考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度