Article 精神疾患:統合失調症への感受性を示すニューレグリン1−ErbB4経路はSrcによるNMDA受容体の増強を抑制する 2011年4月1日 Nature Medicine 17, 4 doi: 10.1038/nm.2315 N-メチルD-アスパラギン酸型グルタミン酸受容体(NMDAR)の機能低下は、統合失調症患者の認知機能障害の原因機構であると考えられている。そして、統合失調症と関連づけられている遺伝子NRG1およびERBB4については、統合失調症の患者にみられる過剰なNRG1-ErbB4シグナル伝達がもたらす主要な有害結果のひとつがNMDARの機能低下であると見なされている。しかし、本論文では、ニューレグリン1β−ErbB4(NRG1β-ErbB4)シグナル伝達はNMDARの全般的な機能低下を引き起こさないことを示す。海馬や前頭前皮質では、NRG1β-ErbB4シグナル伝達が非受容体型チロシンキナーゼSrcによるNMDAR依存性シナプス電流の増強を抑制することがわかった。NRG1β-ErbB4シグナル伝達は、海馬のシェファー側枝−CA1シナプスで長期増強の誘導を防止し、またシータバースト刺激の間にSrc依存性のNMDAR応答の増強を抑制した。さらに、NRG1β-ErbB4シグナル伝達は、Srcのキナーゼ活性の阻害によってシータバースト誘導性のGluN2Bリン酸化を防止した。NRG1-ErbB4シグナル伝達は、シナプスでのNMDAR機能のSrcを介した増強を異常に抑制することによって、統合失調症における認知機能障害に関与していると我々は考える。 Full text PDF 目次へ戻る