Letter

肥満:エネルギー収支調節における中枢神経系PPAR-γの役割

Nature Medicine 17, 5 doi: 10.1038/nm.2349

ペルオキシゾーム増殖活性化受容体γ(PPAR-γ)は核内受容体で脂質によって活性化され、脂質とグルコースの代謝に関わる遺伝子の発現を誘導し、栄養シグナルを変換して代謝に結びつけている。PPAR-γは、2型糖尿病治療のために広く処方されてきたインスリン感受性増強薬のチアゾリジンジオン(TZD)系薬剤の標的である。TZD投与の一般的な副作用の1つが体重増加である。本論文では、中枢神経系(CNS)PPAR-γがエネルギー収支に持つ、これまで知られていなかった役割について報告する。ラットでのTZD投与、あるいはPPAR-γとウイルス転写活性化因子VP16(VP16-PPAR-γ)からなる融合タンパク質の視床下部での過剰発現により、CNSのPPAR-γを急性的および慢性的に活性化すると、正のエネルギー収支につながることがわかった。CNS PPAR-γを、内因的活性化の薬理学的アンタゴニストによって阻害する、あるいはshRNAによってその発現を抑制すると、負のエネルギー収支が導かれ、高脂肪食(HFD)飼育ラットではレプチン感受性が回復し、TZD経口投与に応じて起こる摂食亢進反応が遮断された。これらの知見は、TZD系薬剤の臨床における幅広い利用にかかわり、また食餌誘導性の肥満の病因解明にも関係してくる。

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