Article 心疾患:GDF-15は白血球インテグリン活性化阻害因子で、心筋梗塞後マウスの生存に必要とされる 2011年5月1日 Nature Medicine 17, 5 doi: 10.1038/nm.2354 心筋梗塞後の炎症細胞の動員は、心破裂などの致死的合併症を回避しながら梗塞巣を治癒させるために厳密に制御されなければならない。トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)に近縁のサイトカインであるGDF-15(growth differentiation factor-15)は、マウスおよびヒトの心臓の梗塞部で誘導される。本論文では、Gdf15欠失マウスの冠状動脈結紮は、梗塞部の心筋に向けた多形核白血球(PMN)の動員を促進し、心破裂の発生率を増大させることを示す。反対に、組換えGDF-15の注入は、心筋梗塞後のPMNの動員を抑制した。in vitroでは、GDF-15はPMNの接着、血流下での停止、経内皮遊走を阻害した。機構的には、GDF-15は低分子量GTPアーゼCdc42の活性化と低分子量GTPアーゼRap1の活性化の阻害により、β2インテグリンのケモカイン誘導性コンホメーション変化による活性化とPMN上でのクラスター形成を妨害した。Gdf15欠失マウスのin vivoでの生体顕微鏡観察では、Gdf-15はケモカインによって活性化された白血球の内皮上での停止が過剰になるのを防ぐのに必要であることが示された。骨髄細胞のβ2インテグリンを遺伝的に欠失させると、Gdf15欠失マウスでの心筋梗塞後の死亡率が低下した。GDF-15は、ケモカインシグナル伝達およびインテグリン活性化の直接阻害によりPMNの動員を阻害することが、我々の知る限りで初めて明らかにされたサイトカインである。この抗炎症機序が失われると、心筋梗塞後の致死的な心破裂につながる。 Full text PDF 目次へ戻る