Letter

先天性脳障害:ジュベール症候群マウスモデルで見られるWnt依存性小脳正中線融合の欠損

Nature Medicine 17, 6 doi: 10.1038/nm.2380

繊毛関連疾患であるジュベール症候群は小脳虫部の低形成を特徴とするが、その表現型の病理発生機構は不明である。ジュベール症候群の病因を調べるために、ジュベール症候群関連遺伝子として最初に同定されたAhi1に変異を有するマウスについて検討した。これらのマウスでは、発生初期に虫部正中線の融合欠損を伴う小脳低形成が見られる。この欠損は蓋板の拡大を伴っており、これは別のジュベール症候群関連遺伝子であるCep290に変異をもつマウスでも見られる。さらに、ジュベール症候群患者の胎児期磁気共鳴画像(MRI)でも同様の正中線の裂け目が見られ、一致する病理発生機構であることが示唆される。以前に得られた証拠から、Ahi1にコードされるタンパク質であるジュベリンが標準的Wntシグナル伝達にかかわっていることが示唆されている。これと一致して、Ahi1変異マウスの発生段階の小脳では、半球の融合部位でWntレポーター活性が減弱していることがわかった。この減弱は融合部位における細胞増殖の低下を伴っていた。また、Wnt経路のアゴニストであるリチウムの投与はこの表現型を部分的に救済した。以上の知見は、ジュベール症候群で見られる小脳正中線表現型にWntシグナル伝達の障害が関与することを示しており、この障害はWnt刺激により克服される可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度