Article 糖尿病:ノッチシグナル伝達阻害はFoxO1に依存する形でインスリン抵抗性を改善する 2011年8月1日 Nature Medicine 17, 8 doi: 10.1038/nm.2378 転写因子FoxO1は肝臓でのグルコース産生を促進する。FoxO1機能を遺伝的に阻害すると、実験動物モデルで糖尿病が防止されることから、FoxO1機能を調整する薬理学的手法が探されている。腫瘍形成ではノッチシグナル伝達の変化が明らかであり、がん治療へのノッチアンタゴニストの使用については臨床試験が行われている。今回我々は、FoxO1とノッチが肝臓の糖代謝を協調的に調節していることを報告する。FoxO1とノッチ1の両方にハプロ不全を起こすと、ノッチ転写エフェクターRbp-Jκを肝臓特異的にノックアウトしたマウスで見られるように、食餌誘発性インスリン抵抗性におけるインスリン感受性が著しく向上する。逆に、ノッチ1の機能獲得変異は、FoxO1に依存してインスリン抵抗性を促進し、グルコース-6-ホスファターゼ発現を誘導する。ノッチシグナル伝達を、γセクレターゼ阻害剤によって薬理学的に遮断すると、やせたマウスおよび肥満したインスリン抵抗性マウスでin vivo投与後にインスリン感受性が上昇する。以上の結果は、代謝におけるノッチの今まで知られていなかった機能を明らかにしており、ノッチ阻害が糖尿病治療に有用であり、その一因は肝臓でのFoxO1駆動性の過剰な糖産生の抑制であることを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る