Article

心疾患:カルベジロールとその新規類似化合物は不整脈
原性のストア過負荷誘発Ca2+放出を抑制する

Nature Medicine 17, 8 doi: 10.1038/nm.2406

カルベジロールは、心不全での心室頻脈性不整脈の防止に最も有効なベータ遮断薬の1つだが、その抗不整脈という有用な影響の基盤となる機序は明らかではない。心不全患者では、ストア過負荷誘発Ca2+放出(SOICR)とも呼ばれる自発的Ca2+波が心室頻脈性不整脈を引き起こす。今回我々は、検討したベータ遮断薬の中で、
カルベジロールは心臓のリアノジン受容体(RyR2)の開口時間の直接短縮によりSOICRを効果的に阻害する唯一の薬剤であることを示す。カルベジロールのこの特異な抗SOICR活性は、そのベータ遮断活性と合わせて、抗不整脈作用の一因となっていると考えられる。
カルベジロールのベータ遮断薬としての作用、またSOICR抑制薬としての作用を分離して、それぞれの最適用量を設定できるようにするために、SOICR阻害性を持ち、ベータ遮断作用がきわめて弱い新規カルベジロール類似化合物であるVK-II-86を開発した。VK-II-86はRyR2変異マウスでストレス誘発性心室頻脈性不整脈を防止し、選択的ベータ遮断薬のメトプロロールあるいはビソプロロールのいずれかと併用した際にはさらに高い有効性が見られた。SOICR阻害と最適なベータ遮断効果との組み合わせは、個々の患者に合わせて最適な抗不整脈治療を提供できる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度